令和元年度 技術交流会(令和2年1月31日)
「二巡目の橋梁点検、どう変わる?どう変える?」をテーマに令和元年度技術交流会を開催しました。
昨年度までに近接目視が義務化された一巡目の点検を終えました。これから実施する二順目点検では今まで以上に過去の点検との対比の重要性を意識したうえで、点検・診断を行う必要が生じます。また、「道路橋定期点検要領」が平成31年2月に改訂され、近接目視に変わる代替技術の適用が可能となりました。
これから実施する二巡目点検では、一巡目以上に、限られた予算でより効率的・効果的・合理的に点検を実施していくことが求められています。今後の橋梁点検は「どのように変わるのか?」という疑問や「どのように変えていかねばならないのか?」という課題に対して、官学の異なった立場の講師をお招きし、“点検要領改訂の内容や背景”、“各管理者の対応方針”および“他県での取り組み姿勢”などを伺いながら討論することによって、さまざまな疑問の解消や課題解決のヒントについて考えました。
<第1部 技術交流会>
日 時:令和2年1月31日(金) 14時~17時30分
場 所:常盤工業会館 2階会議室(山口県宇部市東梶返1-10-8)
テーマ:二巡目の橋梁点検、どう変わる?どう変える?
講演1 点検支援技術の活用について(14:05~14:35)
国土交通省中国地方整備局道路部 道路構造保全官 錦織直紀 氏
国土交通省中国地方整備局企画部施工企画課 施工係長 小山隆二 氏
講演2 山口県の橋梁点検への取り組みについて(14:40~15:10)
山口県土木建築部道路整備課 主査 福田将之 氏
講演3 技術的助言を踏まえた岐阜県での取り組み(15:15~16:05)
岐阜大学 情報連携統括本部 副本部長 教授 村上茂之 氏
パネルディスカッション(16時10分~17時30分)
コーディネーター:山口大学大学院 麻生稔彦 氏
パネラー:国土交通省中国地方整備局 錦織直紀 氏
山口県土木建築部道路整備課 福田将之 氏
岐阜大学 村上茂之 氏
サンヨーコンサルタント(株) 林一成 氏
宇部興産機械(株) 和多田康男 氏
<第2部 意見交換会>
日 時:令和元年1月31日(金) 18時00分~19時30分
場 所:常盤工業会館 2階会議室(山口県宇部市東梶返1-10-8)
内 容:参加者によるフリーディスカッション
<パネルディスカッションでの質疑>
Q:麻生氏(コーディネーター)
国の点検要領が改定され1年となりますが、新技術の利用状況はいかがでしょうか。
A:錦織氏(中国地整)
受注者の方にできるだけ新技術を活用していただくようお願いしています。橋梁では10数橋、トンネルでは20数トンネルですでに実績があり、ドローン等による画像撮影が多いです。水中ドローンによる洗堀調査の例もあります。
Q:麻生氏(コーディネーター)
山口県として新技術導入のための課題は何でしょうか。
A:福田氏(山口県)
まずは、何をもって近接目視と同等と判断するのか。次に、仮に高額であっても使用するのか。が考えられます。まだまだ研究するべき事項が多いと思っています。
Q:麻生氏(コーディネーター)
「新技術」とそれを使う側の「ヒト」との兼ね合いをどうお考えでしょうか。
A:村上氏(岐阜大学)
健全度の判断には「経験」が必要であるため、現時点の新技術では対応が難しいと思います。但し、健全度1であれば新技術での置き換えは可能と考えます。岐阜県の橋梁の場合、健全度1は6割を占めます。そこにロボット等による簡略化、効率化が入れば、技術者のヒト手不足解消へも通じるのはないかと考えます。
Q:安田氏(中国施設設計)
措置のひとつである「監視」について考えをお聞かせください。
A:錦織氏(中国地整)
損傷レベルにより監視の程度(精度)は変わってくると思います。損傷レベル2であれば予防保全的な監視であろうし、レベル4であれば補修なりを行うまでの監視なので、常時モニターなど精度の高いものが求められと思います。また、どの程度動いたらどう対応するかなどの基準も決めておく必要があると思います。
Q:安田氏(中国施設設計)
「監視」においてAIが活躍する場面があるでしょうか。
A:村上氏(岐阜大学)
措置を判断する上での基準値や閾値を考える場で活用できるかもしれません。
Q:村上氏(東谷)
点検結果の最終判断はどのようにされているのでしょうか。
A:福田氏(山口県)
診断協議において、全体的な視点からの損傷の程度や進展性などを話し合いながら最終的な健全度の判断をしています。
Q:林氏(サンヨーコンサルタント)
小規模橋梁において着目箇所の特定等による作業量の低減が実際に図れれているのでしょうか。
A:錦織氏(中国地整)
点検要領の改定内容に応じて実施しており、省力化につながっていると考えています。
Q:林氏(サンヨーコンサルタント)
新技術を採用した場合の積算についてのお考えをお聞かせください。
A:福田氏(山口県)
課題でもありましたように他県の状況を見ながら考えて行きたいと思います。
Q:林氏(サンヨーコンサルタント)
山口県に比べ岐阜県は健全度1の割合が高いように思いますが、見解の統一はなされているのでしょうか。
A:村上氏(岐阜大学)
MEを活用して見解の統一は図っております。健全度1の割合が高いのは、以前の5段階の分類から4段階に変更した際に、健全度1に分類されたものが多かったからではないでしょうか。
Q:和多田氏(宇部興産機械)
3巡目となる5年後はどうあるべきでしょうか。
A:村上氏(岐阜大学)
診断のバラツキをなくさなくてなりません。この辺りがグラついているとAIがいくら進歩してもいいものにはならないと思います。今後5年間は官民が連携して取り組む必要があると思います。
Q:瀬良氏(エイト日本技術開発)
岐阜県におけるネガティブチェック項目の見直しはあるのでしょうか。
A:村上氏(岐阜大学)
新技術の動向を注視しながら見直しを随時行っていきます。